ストライクエニイホエア -Side B-
おばあちゃんの知恵袋。 
2011.03.23 Wed 22:47
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雨の日。23区の外れにある小さな古い写真屋に僕は飛び込む。

フィルムのパトローネにベロを残さずに巻いてしまい

それを引っ張り出すためのフィルムピッカーとゆーシロモノがあるのだけれどそれが壊れちゃって

あわよくばこのお店でフィルムの先っちょを取り出してもらえないかしらとこんばんわー。

小さなカウンターケースの奥から出てきたのはおばあちゃんで

ありゃま、このおばあちゃんにわかるかなあと思いつつもフィルムのベロを出したいんだけどと話してみると

それならコレをお使いなさいとじゃじゃんと新品のフィルムピッカーをショーケースから取り出して僕に渡す。

「あたしはもう目が悪いからこーゆー細かいのは無理だからおにーさんがやってみて」

ピッカーでスルスルとフィルムのベロを引っ張り出す。

「フィルムやってんだねえ」

そこからおばあちゃんは亡きおじいちゃんと店を構えた経緯を話し出す。

撮影、現像、プリントを一通りおじいちゃんから厳しく教え込まれたこと。

「水洗いが大事なのよ」

おばあちゃんは水洗いが大事だと話の途中で5回は言い、

そして奥の部屋から古びたアルバムを持ってくる。

そこには50年前のモノクロプリント。すごい。カッチョいい。

50年前のおばあちゃんのポートレイト。すごい。めちゃくちゃキレイ。

50年前の美しい女性、50年前のファッション、50年前のヘアスタイル、50年前の街並み。

それは50年後の今でもキラキラしていて、僕は写真に引込まれる。

「水洗いが大事なのよ」うんうん、この写真を見ているとまったくもってそうかもしれない。

「これは、金閣寺で撮った写真、それからねとっておきがあってね」と言いつつ見せてくれた写真は

若き写真屋夫婦と共に写る大きな外国人。

ジョンウエイン。

「ちょうど金閣寺に来てたのよ」

50年前の金閣寺、50年前の若き夫婦、50年前のジョンウエイン。

写真は記録となり、思い出となる。だけども色褪せることのないモノクロ写真は

ついこの間のことのように思えたりもしちゃうわけで

僕は写真の中で、ショーケースの傍で微笑む若き女性に惚れそうになる。

「これ、アタシ」

入れ歯が少しずれたおばあちゃんがショーケースの傍でケタケタと笑う。

写真の中で若き頃の写真屋の夫婦はローライのオートマットとマミヤ35を持って笑っている。

「写真は水洗いが一番大事よ」










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Author: 長谷川シン  
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