
蛇口からじゃあじゃあと流れ出る水道水のように
あっとゆー間に時間は流れ過ぎて、
二月も排水口にスルスルと流れていくようにもう一週間が過ぎて行く。
シンクにこびりついた水垢のように、流れ過ぎ去って行った時間の中で
僕の心の中にこびりついて離れない記憶のひとつにふいーっとため息をつく。
腰を痛めている僕はため息でさえも腰にピキンと鈍痛。
心と体の調子が同時に悪いとどうにもこうにもさすがに凹む。
足を引きずるように仕事をする僕を見て、掃除のオバちゃんが
まあこれでも食べなさいと取り出したのは桃の缶詰で
なんで桃の缶詰なんだろうと思いつつも、
やはり桃の缶詰ったら子供の頃から好きなわけで、ありがたく頂戴する。
カバンにぎゅうと押し込んで帰る道すがら
桃缶はずしりと重く、腰を痛めた僕にはかなり堪える。イテテ。
事務所に戻り、腰の痛みと心の痛みでグッタリと椅子に寄りかかる。
腰が痛くてご飯も食べる気がしない。でもなんか食わないとなあ。
そうだそういや桃缶をもらったんだよ、缶切りあったっけなあ。
なけりゃニッパーでこじ開けちゃおうかしら。あったよ缶切り。
ぱかんと開いた桃缶には桃二個分のシロップ漬け。
缶からそのままフォークで突き刺して食べる桃のシロップ漬けときたら
そりゃあもう美味しくって、缶の切り口に気をつけながら飲むシロップも
そりゃあもう美味しくって、そしてなんだか切なくって
空になった桃缶の軽さに僕はまたため息をひとつ。
腰がまたズキン。さえねえなあー。ほんとにもう。