ストライクエニイホエア -Side B-
届け 
2009.09.22 Tue 20:50


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少し混んだ電車の中で小学生低学年くらいの男の子が


つり革を掴もうとして手を伸ばしている。


まだ小さい彼にはつり革は届かない。


背伸びをして、つま先立ちをして、


やっとのことで伸ばした指先がつり革に触れる。やったあと顔がキラキラ。


僕はその光景を眺めながら、いつか、そう遠くない日につり革を掴むことが出来るんだよと


くすりと笑う。


子供の頃、自分の成長しているのを自分自身ではよくわからなくて


はるか頭上にあるものを必至に掴もうとしていた。


地下道の低い天井の梁、天井からぶら下がった緑色の非常口の表示灯、


学校の廊下の天井に付けられたスプリンクラー、教室の扉の上に4-2と書かれたプラカード。


届きそうで届かないものってなんであんなに触りたくなっちゃうんだろう。


だだだっと助走をつけてぴょんとジャンプ。


指先に触れたら今度は指の第二関節まで、


最後は手のひらでぺたんと触れるようにとまた繰り返しジャンプ。休み時間ぶっ続けジャンプ。


着地でバランスを崩して尻餅をついたり、足首を捻って捻挫したりして


保健室の先生に呆れられつつ湿布を貼られたりもしたっけなあ。


その後、スクスクと成長した僕は、気がつくとあの頃届かなかったモノに


頭をぶつけるくらいになった。


タバコ屋の軒先にぶら下げられた看板にがちょんと頭をぶつけ、


電車のつり革にべちんとおでこをぶつけ、


電車を降りるときに、電車のドアの上にがちんと頭をぶつける。マジいてえの。


今ではすっかり体が成長しきってしまい、それどころか退化中の僕には、


いつの日かあの高さが届くだろうって希望はもうないし


だだだっと助走をつけてジャンプしようとは思わない。酔っ払うとしちゃうけど。バカ。


今は目に見えるモノではなく、


心の中のモノ、気持ちを届かそうと手を伸ばす。


キミに伝えようと、僕はうーんと背筋を伸ばして、つま先立ちをする。


心の中はいつだって成長期。


キミの心はいつだって反抗期。



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Author: 長谷川シン  
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