ストライクエニイホエア -Side B-
at hospital 
2013.04.16 Tue 21:50


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ゴローさんが亡くなった。

僕が病院に仕事で来るようになった頃からすでに療養中で、

抗がん剤治療を受けつつ入退院を繰り返していたんだ。

その頃はまだ本当に病気なのかと思える位に元気で、

でも抗がん剤の副作用で頭髪は抜け、自らスキンヘッドにしてしまい

ヤクザみたいな風貌だったけど。

退院の日には黄色いアロハシャツにストローハットを被り、柄の悪いサングラス。

まるでこれから飛行機に乗って沖縄旅行に向かうヤクザな旅行者みたいだった。

これから羽田空港に行ってブツを運ぶの?と僕の悪ふざけにニヤリと笑いながら

また来月辺りに来るからよ。

そう言いながら病棟から出て行く彼を僕は何度も見送り、

またよろしくなと言いながら病棟にやって来る彼を何度となく迎えたんだ。

しかし去年の終わり頃から少しづつ体調を崩し、体重もだいぶ減り、辛そうになってきた。

もう俺もダメだな。そう彼は僕に言い、僕は何言ってんだよゴローさんと返したけれど

それ以上言葉が出てこなかった。

四人部屋のゴローさんの向いには同じような病気の人が酸素マスクを付け、

力なく口を開きながらベッドに横たわっていて、

それを観ながらゴローさんはそいつももうダメだと呟く。

そんなこと言うもんじゃないよと僕が言うと

いや、わかるんだよ。いずれ俺もこうなるんだからな。

そう言ったゴローさんは覚悟を決めているような強い眼差しをしてた。

自分の終わりを身体で感じ、それを受け止める心。

いつかそんな事が僕にだってあるかもしれない。

その時僕はどう受け止めるのか。

生きることに諦めとゆーか、死への覚悟とゆーか、

未練や諦めや焦りや失望や小さな希望。

それらをどう感じるのだろう。

また顔見にきますと僕は言い、

しかしなかなか会いに行く機会がなくひと月以上経ってしまった四月の中頃。

病棟に行くとゴローさんの名前がない。

顔見知りの看護士に聞くと先月末に亡くなった事を聞かされる。

そうか、逝ってしまったのか。

最後に会ったゴローさんの面影が浮かぶ。

衰弱していたとはいえ、まだしっかり僕と話も出来ていた彼を

最後に見れた事に良かったかなと思うんだ。

病魔に身体中を冒され、力なくベッドに横たわっているゴローさんを見る事なく

彼の訃報を聞いた事でゴローさんの眼差しの強さだけが僕に残った。

外は桜が散り、ハナミズキが咲き誇っている。

R.I.P.









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Author: 長谷川シン  
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