ストライクエニイホエア -Side B-
at hospital 
2012.12.25 Tue 22:06
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病のために手術で左足を膝の下から切断してしまった彼女は

この歳になってこんなツライ思いはしたくないのよ、

もう死んでしまいたいとベッドの上で泣いていた。

車椅子に乗る時はひざ掛けを掛けて、

なくなってしまった左足を隠して見えないようにしていた彼女が、

ようやくパジャマのズボンの左側をヒラヒラと揺らしながら堂々と

車椅子に乗れるようになった頃、まだまだ涙を流す事が多かったけど、

僕のくだらない話しに少し笑えるようになって、顔色もよくなって、

彼女のべらんめえ口調もようやく戻って来た。そうだよ彼女はこうでなきゃ。

カメラを持参した僕に、ベッドで横になっていた彼女はしていたマスクを外して

モデルみたいなすました笑顔をしてピースした。

あはは、いい顔だよ、とても美しい。

もうすっかりおばあちゃんなのだけども

昔はきっと美しかったのだろうなあと思わせる凛とした顔立ちで、

それはきっと彼女もそう思っていたと彼女の顔から自信を感じる。




三日後に撮らせてもらった写真を彼女に渡す。

すると彼女は写真を観た途端に泣き出して写真をビリビリと破いてしまった。

私はこんなオバケみたいになってしまったと泣く。

そうなんだ、僕の撮った写真の中の彼女はいい顔をしていても、

彼女にとっては闘病中で髪もボサボサでくたびれた自分を観てるようで、

いつものプライドの高い上品でちゃんと化粧と洋服をまとった彼女は写っていない。

入院してから鏡も見る事がなくなってしまった彼女には

写真に写る自分の現実をまたありありと突きつけられたようで、

それをかき消す為に破いてしまった。

僕はまた写真のあり方について考える。

その時のいい顔いい表情を撮っても、その人が思う一番いい顔、表情ってのは

その時では決してないわけで、

そりゃあ生まれてからずっと自分の顔と付き合ってるわけだし

本人こそが一番の顔を知っている。

でも僕に撮れるのはその時の顔しか撮れない。

たったの百分の一秒くらいの瞬間の顔。

だけど僕はその瞬間にとびきりの顔を撮りたいと常々思っているんだ。

撮らせてくれた本人には決していいとは思われないかもしれないけれども

彼女を知らない誰かが写真を観てその人の生を感じてくれたらいいなと思う。

撮らせてもらっている事に感謝しつつ僕の胸の中とフィルムの中へ

彼女の最高の瞬間をしまいこめるようにシャッターを切ろう。

翌日、彼女の病室に行くとベッドサイドに破かれた写真が

セロハンテープで貼り直されて飾ってあった。

少し照れ笑いをした彼女はまたいい顔してて、

照れ隠しのべらんめえ口調もいい感じで、

僕は、ねえまた写真撮らせてね。と言う。

「こんな婆さん何度も撮るもんじゃあないよアンタ」










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2013.01.03 22:43 | URL | nnn... | 編集
2013.01.04 05:58 | URL | しん | 編集
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Author: 長谷川シン  
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